執着魔法使いの美味しい求愛
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 騎士として働く者には二種類の人間がいる。そこそこいい家に生まれているからこそ、後ろ盾を作りたくて騎士団に入団する者たち。もしくは、純粋にお金が欲しいと思う者たち。
 今回、フレーテン商会から魔宝石を横流ししていたのは、前者であった。
 フレーテン商会が取り扱う魔宝石は、質が良い。それを盗み、安く関係者に売りさばくことで、人脈を作ろうとしたようだ。
 さらに彼らは、弱者には強気になるという性質を持つ。守るべき民を脅す者もいる。その脅された民が、フレーテン商会で働く一人の男だった。
 息抜きに訪れた賭博所で、その騎士の鴨になってしまったらしい。多額の借金をこさえてしまい、それを帳消しにするために騎士の言いなりになってしまった。
 フレーテン商会が一つの店舗を閉めて、本店に統合する。となれば、閉める側の荷物などを運び出す必要がある。そこに目をつけたようだった。
 さらに、商会長の娘であったティルサが、閉店が決まった途端、店から遠のく。となれば、引っ越しの作業指示を出すのは、男の役目。荷物を運び出す振りをしながら、少しずつ魔宝石を盗み出していた。
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