執着魔法使いの美味しい求愛

「できれば。私が誇れるものは、魔宝石の知識くらいしかないから」
　そこでティルサは目を伏せる。それは、彼女が自信の無いことを表している。ルトヘルは口元を緩めた。
「そうか。でも、ティルサならそう言うと思っていたよ。ここに来てくれたことは嬉しいけれど、ティルサにはもっと自分の好きなようにしてほしい。それに、オレだってフレーテン商会の仕事を手伝っているんだし。ティルサはティルサのままでいいんだよ。今後のことは、二人でゆっくりと考えよう」
　ルトヘルの言葉を聞いた彼女は、顔をあげて微笑んだ。
「ルトヘル、ありがとう」
「今、イリスさんと一緒に、新しい店舗の場所を探している。君が働く予定の魔宝石店だ。『誰でも気軽に立ち寄れる魔宝石店』の店舗だよ」
　ティルサは、目を大きく開いて、いつもより多めに瞬いた。
　驚きもするだろう。
　何しろ、彼女に気づかれないように、ルトヘルがイリスと共にこっそりと計画をしていたのだから。