執着魔法使いの美味しい求愛
 ルトヘルも自分のために努力してくれるティルサの気持ちは嬉しいと感じていたが、だからといって彼女から好きなものを取り上げるつもりはなかった。その好きなものが他の男性であるならば、もちろん取り上げる必要はあるが、魔宝石が相手であるならば、まだ許すことができる。
「あのとき、ルトヘルが来てくれて嬉しかった。よくあの地下室に私がいるってわかったわね」
「前にも言っただろう? オレはティルサのいる場所ならどこだってわかる」
 ルトヘルはティルサの手をとると、その甲に口づけた。突然の行為に驚いたティルサは、頬を赤らめる。
「また、そういう冗談ばかり言って」
 これ以上の行為をいつもしているのに、たったそれだけのことで表情を変えるティルサは、可愛い。
 そして、ルトヘルが口にした「ティルサのいる場所ならどこだってわかる」というのは、冗談ではなく、事実だ。
 だが、彼女は知らない。ルトヘルが求婚したときに送った指輪。それにはルトヘルが魔法付与をした。彼が付与した魔法は、彼女の居場所がすぐにわかる位置探査魔法だ。
 できるだけ使わないようにと心に決めていたルトヘルだが、五日前だけは別だった。初めて位置探査魔法を使った。
 エリンは呆れていたが、あの魔法付与があったおかげですぐにティルサの居場所がわかったのだ。
< 137 / 147 >

この作品をシェア

pagetop