執着魔法使いの美味しい求愛
 だがそれを、ルトヘルはティルサに伝えるつもりはなかった。
「ほら、ティルサ。口を開けて」
 ルトヘルは四角いクッキーを摘まむと、ティルサの口元に寄せる。
「そんなに食べたら、また太るでしょう? 結婚式まで痩せたいって、あれほど言っているのに」
「大丈夫。ティルサがオレの魔力を取り込んだとしても、オレがそれを吸収するから。ティルサはね、オレの魔力を増強させてくれるんだ。それをオレが貰うことで、オレの魔力が回復する。つまり、いいこと尽くし。だから、食べて」
「太らない?」
「太らない。太ったとしても、すぐにオレが協力する」
「ルトヘルは、胸の大きい子が好きなの?」
 ルトヘルが手にしていたクッキーがぽとっと落ちた。落ちた先はティルサの胸の上だ。
「だ、だから。それは誤解だ。お、オレは知らなかったんだ。父さんに言われてから知った」
 ふふっとティルサは笑う。
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