執着魔法使いの美味しい求愛
　すっと立ち上がったエリンは両手を腰に当てて、ルトヘルを睨みつけている。
「オレの悪口をティルサに吹き込むような人は知らないな」
「ふん。そっちがその気なら、あんたがいないときに、あんたが今までやった悪行の数々を、包み隠さず教えるからね。あの指輪の件も」
「ティルサはそのくらいでオレのことを嫌いになるような、心の狭い女性じゃない。だが、指輪のことをティルサに教えたら許さない」
　ふん、とエリンは息を吐く。
　二人の間に見えない火花が散っているような、険悪な雰囲気である。
「ルトヘルも、一緒にお茶をどう？」
　ティルサはこの雰囲気を変えようと、彼をお茶に誘う。するとルトヘルは手を振って断った。
　そして、ティルサにだけ聞こえる声で、耳元で囁く。
　その言葉で、ティルサの顔は熟れた果実のようにぱっと色づいた。思わず、両手で頬を押さえる。
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