執着魔法使いの美味しい求愛
　ティルサは口を開けた。デザートをのせたフォークが、口の中に入ってくる。
「あ、美味しい」
　思わずその言葉が漏れ、笑みがこぼれてしまった。ルトヘルも安心したように笑う。
「良かった」
　目を細める彼に、またティルサの胸が打たれた。
　夕食を終え、他愛もない話をしていると、ティルサの帰宅時間となる。これ以上遅くなると、家の者が心配する時間だ。
「ルトヘル。今日もありがとう。そろそろ帰るね」
「送っていくよ」
　そして、彼に送られてフレーテン家の屋敷にまで戻るというのが、この食事会の通常の流れなのだ。
　だから今、ティルサはルトヘルと向かい合ってシラーニ家の所有する馬車に揺られていた。お腹もいっぱいになり、不規則な揺れが心地よく、ティルサを眠りへと誘う。
　コツンと頭が窓に触れると、目の前のルトヘルがふふっと笑った。
　笑われたのが悔しくて、ティルサが唇を尖らせれば、ルトヘルは慌てて「ごめん」と口にする。
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