執着魔法使いの美味しい求愛
 そうやって見た目が変化しても、変わらぬ付き合いをしてくれる異性は、今ではルトヘルだけになった。
 彼もティルサのこの容姿に呆れていることだろう。ティルサ自身も、今の姿が彼の隣に相応しい姿だとは思ってもいない。
 彼がティルサを気にかけてくれるのは、フレーテン商会との繋がりを保ちたいからだ。
(そうよ……。ルトヘルだって、フレーテン商会と繋がっていたほうが、何かと便利だもの……。だから、自惚れては駄目)
 ティルサは何度も、自身にそう言い聞かせている。
 フレーテン商会では、魔宝石以外にも魔法具も扱っているし、そういったものに魔法付与ができる魔法使いたちとも契約をしている。
 魔法使いにとって、国へ仕える王宮魔法使いは魅力的な地位ではあるが、魔宝石や魔法具に魔法付与をする仕事も、高給取りである。
 だから、王宮魔法使いに相応しい身分と魔力を持たないような魔法使いたちは、フレーテン商会との契約を望んでいる。それは、自慢できる地位の一つであると考えているようだ。
 だからこそ、フレーテン商会は信用できる魔法使いとしか契約をしない。その信用を勝ち取るために、ティルサへ近づこうとしていた魔法使いは多かったのだ。だが、それも過去のこと。
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