執着魔法使いの美味しい求愛

（やはり……。私が太り始めたから……）
　ティルサは唇を噛みしめ、顔を伏せた。
「ティルサ。オレのほうを向いて」
　ルトヘルの甘い声が、ティルサの心を揺さぶった。不安と期待が入り混じる。
　恐る恐る彼女は顔を上げた。ルトヘルと目が合う。
　魔法灯で照らされる馬車の中は、不思議な陰影をルトヘルの顔に落とす。
「来月のオレの誕生日パーティーで、君を紹介したいんだ」
　ティルサには、ルトヘルが口にした言葉の意味を即座に理解することができなかった。
（パーティー？　紹介？　誰に？）
　ティルサは青い目を大きく見開くと、ルトヘルに緩やかに視線を向けた。
「私を誰に紹介するというの？　魔宝石が欲しい客でもいるのかしら？　それとも、フレーテン商会と契約をしたい魔法使い？」
　目を細めた彼は、口元に笑みを浮かべ、首を横に振る。
「ちがう。君を、オレの大事な人として、魔法貴族の奴らに紹介したい。次の誕生日で、オレは父から魔法爵位を継ぐことになっている」
「それって……」