執着魔法使いの美味しい求愛
 大事な人と言われてしまえば、ティルサだって期待してしまう。
「今はまだ、準備が整っていないから、全部は言わない。オレだって、格好つけたいときだってあるんだ」
 恥ずかしそうにうつむくルトヘルの首元は、赤く染められていた。それが魔法灯によって照らされたものなのか、彼自身の気持ちによって染め上げられたものなのか、ティルサにはわからない。
 ふぅ、と大きく息を吐いたルトヘルは、もう一度ティルサを真っすぐに見つめてきた。
「パーティーには、オレが送るドレスを着てほしい。それから、今日の魔宝石も。パーティーに間に合うように加工する。だから、どうかオレと一緒にパーティーに出席してほしい」
 ルトヘルが手を伸ばし、ティルサの両手を握りしめる。
 包まれた手から伝わってくる彼の体温。それを感じながら、ティルサはゆっくりと頷いた。
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