執着魔法使いの美味しい求愛
 魔力が暴走したと言い訳しても、きっと彼らは聞き入れてくれないだろう。
「こっちよ」
 突然路地裏から手が伸びてきて、ルトヘルの手首を捉えた。
 ルトヘルが声のしたほうに顔を向けると、金髪の女の子が「しっ」と口元に右手の人差し指を立てる。
「そのローブを脱いで。マクシム、それを預かって。あなたは悪いけど、ここにうつ()せに倒れて」
「え?」
 無理矢理ローブを脱がされ、レンガ路の上にうつ伏せで寝るように言われたルトヘルは、これから何が起こるのかなどさっぱり予想がつかない。
「いいから。私の言う通りにして」
 見るからに子どもである女の子。年は、七歳か八歳か。恐らくその年齢は二けたには到達していないだろう。
「いいから、急いで。あの騎士たちに捕まりたいの? 追われているんでしょ?」
 どうやら彼女に見られていたようだ。事情を知っているのなら、この状況から助けてくれるだろうと、相手が子どもでありながらも期待を寄せてしまう。
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