執着魔法使いの美味しい求愛
「やはり、オレの見立ては間違っていなかった。よく似合っている……。他の男には見せたくないくらいに」
 ルトヘルの言葉に、ティルサの頬もぱっと熱を帯びた。
「また、そんなことを言って」
 嬉しさを誤魔化すために、ティルサは自身の顔に向けて手をひらひらと振る。
 さわさわと風が顔に吹き付けた。そのまま、頬の熱を奪ってくれることも期待しているのだ。
「では、ティルサ。行こう」
 お預かりします、と几帳面に頭を下げるルトヘルの所作は、ティルサから見ても整っていた。幼い頃からの習慣が、しっかりと彼に身についているのだろう。
 彼を見れば見るほど、自分が彼の隣にいていいのかという不安と、そんな彼の期待に応えたいという前向きな気持ちが、ティルサの心の中では複雑に絡み始める。
 ルトヘルと馬車に揺られて、彼の屋敷へと向かう。
「ルトヘル。あなたの誕生日パーティーなのに、あなたがここにいて大丈夫なの?」
「問題ないよ。今日は、両親もこちらに来ているし。それに、パーティーが始まるまでにはまだ時間もある。先に、君のことを両親にきちんと紹介しようと思って」
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