執着魔法使いの美味しい求愛

「父さん、母さん。ティルサを連れてきました」
　扉を叩いたルトヘルがそう向こう側に声をかけると、二人を歓迎する声が中から聞こえてきた。
「久しぶりだね、ティルサさん」
　ルトヘルとよく似ているのは彼の父親であるオスクだ。しかし黒い髪は短く、すっきりと後ろに撫でつけている。
「本当に、ルトヘルに愛されているのね」
　少し困惑したような笑みを浮かべているのは、母親のノーラである。金色の髪をねじりあげてタイトにまとめているだけなのに、艶めかしい。
「ご無沙汰しております、小父様、小母様」
　気を抜けば震えるそうになる声に力を込めて、ティルサは挨拶をした。
　ティルサはルトヘルに促されて、彼の両親の前に座る。
　応接室の天井にも、化粧漆喰のレリーフが施され、壁にはフレスコ画が描かれている。どちらも、背中に羽根をつけた裸の男女が空へと飛び立とうとしていた。
「単調直入に聞くわ。ティルサさんは、本当にルトヘルでいいの？」