執着魔法使いの美味しい求愛
「ノーラ」
 その名を口にしたのは、もちろんルトヘルの父親であるオスクだ。
「だって。あのルトヘルよ? 我が息子でありながら、何を考えているかわからないようなルトヘルよ? ルトヘルと今後、一生を共にするのよ? もしかして、ルトヘルに騙されているかもしれない。私は、ティルサさんであれば大歓迎だけれど、大歓迎だからこそ心配なのよ」
 ノーラの言葉に圧倒されるものの、ティルサは返事をする。
「あ、はい……。私も、ルトヘルさんのことが、す……」
 最後まで言うことができなかったのは、彼女の言葉にすぐさまノーラが言葉を重ねたから。
「そう。ならいいんだけど」
 そう言ったノーラの顔が、少し曇っているようにも見えた。
「ティルサさん。ルトヘルはこんな感じの息子だけれど、これから息子を頼むよ」
 オスクは目尻を下げながら、温かな眼差しを送っていた。だからティルサも、ほっと胸を撫でおろす。
「はい。私のほうこそ、不慣れなところはたくさんありますが、よろしくお願いします」
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