執着魔法使いの美味しい求愛
　ティルサが深く頭を下げると、ルトヘルはじっと目の前の両親を睨みつけていた。オスクは、そんな彼の視線を笑顔で交わす。
「ルトヘルは相変わらずだな。お前の婚約は認める。フレーテン家からも、許しをもらっているのだろう？」
「もちろんです」
「ならば、今日のパーティーでの婚約発表で問題は無いな。発表を終えたら、二人で婚約誓約書を教会に提出しなさい」
「そんなこと……。父さんに言われるまでもありません」
「お前は……昔から変わらないな」
　オスクは、呆れたように笑みを浮かべた。
「ルトヘル。悪いけれど、ティルサさんをお借りするわよ。パーティーの開始時間まではあまり時間がないけれど、婚約発表をするのであれば、その流れをティルサさんに教えておく必要がありますからね」
「はい。母さんにお任せします」
　ルトヘルはノーラの言葉には素直に従っていた。
「では、ティルサさん。早速、覚えてもらいたいことがあるわ。こちらに来てちょうだい」
「はい」
　返事をして立ち上がり、ノーラと共に隣室へと向かうティルサの背中には、男同士の会話が聞こえていた。
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