執着魔法使いの美味しい求愛
　そこでノーラはパンパンと手を叩く。
「ティルサさん。時間がないから、駆け足でいろいろと教えるわね」
　そこからノーラによって、今日のパーティーについての指導が始まった。
　今日の招待客。婚約発表までの流れ。そして挨拶の仕方。ティルサが想像していた誕生日パーティーとはだいぶ違うものだった。
　集まって、プレゼントとお祝いの言葉を渡して、みんなでご馳走を食べる。ティルサが知っている誕生日パーティーとはそういうもので、その誕生日パーティーには、何度もルトヘルを招待した。
「私たちも近くにいるから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。魔法貴族たちについては、後日、貴族名鑑で勉強をしましょう」
「はい、ありがとうございます」
　ノーラの優しい笑顔が、ティルサの心を軽くする。
　扉を叩く音がした。
「あら、ちょうどいいところに来たわ。どうぞ」
「伯母様、あのルトヘルが婚約するって本当なの？　あいつと婚約をするって、どれだけすごい子なのよ」
　そんな言葉と共に元気よく一人の女性が部屋へと入ってきた。年はティルサより少し上に見える。華やかなドレスと、メリハリのある身体。澄んでいる金色の髪は、どこかノーラにも似ているようだ。
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