執着魔法使いの美味しい求愛
第三章
ティルサは寝台に潜り込んでも眠れない日が続いていた。それは、ルトヘルの誕生日パーティーに参加してからだ。
あの誕生日パーティーでは、ノーラの教えもあり、挨拶などはつつがなく行うことができた。ルトヘルの婚約者としても紹介され、パーティーの次の日には婚約誓約書も提出した。これで二人は晴れて正式な婚約者同士になったのだが、ティルサの心は晴れない。
彼の誕生日パーティーで向けられた視線、そして聞こえてきた言葉が原因である。
『ルトヘル様の婚約者? 魔法貴族ではないのに……?』
『だけど、ほら……かわいそう……』
『あれでは、ちょっと……』
『エリン様のほうが……』
ティルサが少しルトヘルと離れた瞬間、彼女の耳に届いてきたのは扇で口元を隠している令嬢からの、囁き声。囁き声ではなく、むしろわざと聞こえるように言っていたに違いない。
そこに颯爽と現れたのがエリンで、彼女は同年代の魔法貴族の女性にティルサを紹介してくれた。
エリンと付き合いの深い彼女たちは、ティルサに好意的な視線を向けていながらも、そこからは少しだけ憐れみを感じ取っていた。
(私が、魔法貴族ではないから……)
立ちはだかった身分差の壁の高さを、ティルサは実感した。
あの誕生日パーティーでは、ノーラの教えもあり、挨拶などはつつがなく行うことができた。ルトヘルの婚約者としても紹介され、パーティーの次の日には婚約誓約書も提出した。これで二人は晴れて正式な婚約者同士になったのだが、ティルサの心は晴れない。
彼の誕生日パーティーで向けられた視線、そして聞こえてきた言葉が原因である。
『ルトヘル様の婚約者? 魔法貴族ではないのに……?』
『だけど、ほら……かわいそう……』
『あれでは、ちょっと……』
『エリン様のほうが……』
ティルサが少しルトヘルと離れた瞬間、彼女の耳に届いてきたのは扇で口元を隠している令嬢からの、囁き声。囁き声ではなく、むしろわざと聞こえるように言っていたに違いない。
そこに颯爽と現れたのがエリンで、彼女は同年代の魔法貴族の女性にティルサを紹介してくれた。
エリンと付き合いの深い彼女たちは、ティルサに好意的な視線を向けていながらも、そこからは少しだけ憐れみを感じ取っていた。
(私が、魔法貴族ではないから……)
立ちはだかった身分差の壁の高さを、ティルサは実感した。