執着魔法使いの美味しい求愛
「お嬢ちゃんこそ、何をやっているのかな?」
 ルトヘルは相手の声に聞き覚えがあった。彼らはルトヘルを追いかけていた騎士だ。
「私は、私の使用人に(しつ)けているの。見てちょうだい。こいつ、私の大事なお菓子をこぼしたのよ」
 ふん、と言いながら少女はルトヘルの背中に乗せている足に力を込める。
「うぅっ……」
 思わず呻き声が出てしまった。これはけして演技ではない。
「隊長……、この()は……」
 ぼそぼそと騎士たちの声が聞こえた。
 フレーテン商会、わがまま娘――。
 そのような言葉が騎士の口から飛び出している。
「お嬢ちゃん。いくら使用人と言っても、相手は人間だからね。躾けもほどほどに」
 騎士たちは関わりたくないとでもいうかのように、足早に去って行った。
 しばらく少女はルトヘルの背に足を置いたまま、動かずにいた。
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