執着魔法使いの美味しい求愛
ミルテがお茶を淹れると、黙って部屋を出ていく。
未婚の男女が二人きりで同じ部屋にいることを避けるために、本来であればミルテも部屋の隅に立ち会うのだが、なぜか今日にかぎって彼女は部屋を出ていった。
「そうか……。もしかして、あまり眠れていないのかい? 目の下に隈ができてる」
ルトヘルは身体を乗り出して、右手でティルサの目の下に触れた。ひんやりとした彼の指先が心地よいと感じる。
「そうね」
「悩み事?」
「そうね」
ティルサは目を伏せた。
ルトヘルが立ち上がる気配がした。驚いて顔をあげると、彼はテーブルをぐるりと回って、ティルサの隣に座る。
だから、離れたいのに離れられないのだ。こういったルトヘルの優しさが、ティルサの心を掴んでくる。
「オレには言えないこと?」
ルトヘルの手がティルサの顎を捉えた。言いにくいことがあると、ティルサがすぐに視線を逸らすことを、彼は知っている。
ティルサは、ぱくぱくと餌を求める魚のように口を開けた。何か言わなくてはと思うものの、言葉が出ない。
「ティルサ。そんなに緊張しなくていいんだよ」
未婚の男女が二人きりで同じ部屋にいることを避けるために、本来であればミルテも部屋の隅に立ち会うのだが、なぜか今日にかぎって彼女は部屋を出ていった。
「そうか……。もしかして、あまり眠れていないのかい? 目の下に隈ができてる」
ルトヘルは身体を乗り出して、右手でティルサの目の下に触れた。ひんやりとした彼の指先が心地よいと感じる。
「そうね」
「悩み事?」
「そうね」
ティルサは目を伏せた。
ルトヘルが立ち上がる気配がした。驚いて顔をあげると、彼はテーブルをぐるりと回って、ティルサの隣に座る。
だから、離れたいのに離れられないのだ。こういったルトヘルの優しさが、ティルサの心を掴んでくる。
「オレには言えないこと?」
ルトヘルの手がティルサの顎を捉えた。言いにくいことがあると、ティルサがすぐに視線を逸らすことを、彼は知っている。
ティルサは、ぱくぱくと餌を求める魚のように口を開けた。何か言わなくてはと思うものの、言葉が出ない。
「ティルサ。そんなに緊張しなくていいんだよ」