執着魔法使いの美味しい求愛
「ティルサ、こっちを見て」
　ルトヘルの言葉に、ティルサはゆっくりと目線を動かした。
「ティルサ。キスしていい？」
「え？」
「婚約したから、問題ないよね。ずっと、こうしたいと思っていた」
　いきなり、彼の顔が迫ってくる。「うん」とも「はい」とも言わぬ間に、二人の唇はぴったりと重なり合っていた。
　思わぬ出来事にティルサは大きく目を見開くことしかできない。だが、目の前にはルトヘルの端正な顔。
　ぽんぽんぽんと、ティルサは彼の肩を叩く。
　名残惜しそうにルトヘルは唇を離した。
「どうしたの？」
　困ったように彼はティルサの顔を見つめる。
　だが、困っているのはティルサのほうだ。いきなりキスをされて、わけがわからない。
「どうしたの、って。いきなりこんなことされて、びっくりするに決まってるじゃない」
「いきなりってティルサは言うけれど、オレはずっとそうしたいと思っていた。だけど、恋人同士でもないのにキスなんてできないだろう？　いやだった？」
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