執着魔法使いの美味しい求愛
 ルトヘルは意地悪だ。いやなわけがない。好きな(ひと)から求められて、嬉しくないわけがない。
 それを口にするのが少し悔しい。だから、ティルサは首を横に振る。
「いやじゃない。いやなのは、今の私。もっと、あなたに相応しい女性になりたい」
「ティルサは今でも、オレにとっては充分に相応しい女性だよ?」
 そうじゃない、とティルサは激しく首を振る。
「今の私は駄目。さっきも言ったけど、こんなに太ってしまって醜くなってしまったから。あなたの隣に立つのに相応しい女性になりたい。痩せたいの。あなたの誕生日パーティーの日も、本当はもっと痩せて綺麗な姿で参加したかった。毎日、お散歩しているし、食べ物も気をつけているのに、ちっとも痩せないの。もしかして私、病気なのかな……」
 ミルテが貸してくれた本には、何を食べても太ってしまう病気のことが書かれていた。正確なところは医師の診察を受けなければわからないが、本を読む限りでは、今のティルサの症状が似ていると思ったのだ。
「そうか。やっぱりオレのティルサは可愛いな」
 口角をあげて微笑む彼の姿にすら、壁を感じてしまう。見えない壁。やはり、このような魅力的な男性と自分は釣り合わない。
「でも、ティルサはティルサのままでいいんだ。君の外見なんて、関係ない。むしろ、外見が良すぎると他の男が群がってきてしまうだろう?」
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