執着魔法使いの美味しい求愛
 料理人が作る食事に、自身の魔力を注ぎ込む。それをティルサが食べることによって、彼女はルトヘルの魔力を体内に蓄積していく。
 魔法使いではないティルサが魔力を放出する機会はない。
 体内に蓄積された魔力は、どうやら彼女の外見に影響を与えてしまったようだ。
 それが、彼女が口にしていた「太っている」に該当する。
 結果的に、彼女からはあのときの「美しさ」を奪ってしまったこととなる。しかし、ルトヘルにとっては、ティルサの外見が少し痩せていようが太っていようが関係がなかった。
 ティルサがティルサであればいいのだ。彼女が笑って、ルトヘルの側にいてくれるだけでいい。
 だからこそ、今日のティルサの言葉に衝撃を受けた。
(ティルサが、あんなに悩んでいたとは……)
 ティルサは自分の外見を非常に気にしていた。特に、ここ一年の間、急激に太ってしまったことを気にしていた。
 ルトヘルとしてはうまくいったと思っていた婚約発表も、彼女にとっては不本意であったようにも聞こえた。
(ドレスだって似合っていたのに……。それに、上位の魔法貴族の奴らは気づいたはずだ。ティルサがオレのものだって)
 ルトヘルの頬は緩む。
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