執着魔法使いの美味しい求愛
 彼らはルトヘルにしきりに結婚をすすめていた。シラーニ魔法公爵家と繋がりをもちたいと思う魔法貴族も多い。特に、娘を持つ貴族たちは執拗だった。
 それから逃れるためにも、あの状態のティルサをあの場で紹介する必要があったのだ。
(無事、婚約も済んだし。あとは蓄積された魔力を少しずつ放出してあげれば、ティルサの身体も元に戻るはず)
 そこでルトヘルは、ニヤリとほくそ笑んだ。
 屋敷に戻ったルトヘルは、すぐさまノーラに捕まった。エントランス脇のサロンでくつろいでいた彼女は、帰ってきたルトヘルの姿を見つけるや否や、サロンから飛び出してきたのだ。
「まだいたんですか?」
「それが実の母親にかける言葉かしら?」
 ルトヘルだって、けして実の母親を嫌っているわけではない。母親だからこそ、苦手なのだ。全てを見透かされているような気がして。
「ティルサさんのところに行ってきたの?」
「そうですが。何か、問題でも?」
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