執着魔法使いの美味しい求愛
 くるりとルトヘルに背を向けたノーラであるが、まだルトヘルに言い足りないことがあったらしい。
「そうそう。しばらくの間、ティルサさんにはうちに来てもらいなさい。魔法貴族について、いろいろと教えなければならないことがあるから。もちろん、私が教えるわ」
 ひらひらと手を振って、ノーラはサロンへと消えていく。
 身分違いの結婚を反対されなかっただけでも、良かったと思わなければならないだろう。
 いくらルトヘルが王宮魔法使いであっても、実のところ、その力はまだ両親に及ばないのも事実。
 だからあの両親は、力づくでこの婚約を反対することだってできるのだ。
 それでもティルサと自分を受け入れてくれた両親には、少しだけは感謝をしている。口うるさいところだけを除いて。
 部屋へ戻ろうとしたルトヘルを、今度は書斎から顔を出したオスクに呼び止められた。
「ルトヘル。ちょっと今、いいか?」
 眉根を寄せたルトヘルであるが、彼も父親であるオスクには相談にのってもらいたいことがあった。
「なんでしょう?」
 オスクは廊下に誰もいないことを確認すると、右手の人差し指を上に向けてクイクイと曲げていた。つまり、書斎に入ってこい、という意味だ。
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