執着魔法使いの美味しい求愛
「だから、婚約をしたんです。婚約すれば、堂々と彼女から魔力を吸い出すことができる」
「今はふくよかだが、お前が魔力を吸い出すことによって彼女の体型が戻れば、胸だけは残る」
「なんなんですか、その裏情報は」
「と、母さんが言っていた」
 裏情報の出どこがノーラという点では、少々疑わしい。
「だから、彼女の胸を育てるために、魔力を注いでいたのかと思ったのだ」
「違います。魔力を注ぎ続けて体型が変わってしまうとは、オレも思ってもいなかったんです。どうやらティルサは、魔力を体内に溜め続けると太ってしまう体質だったようです」
 魔力のない者に魔力を注ぐのは、命に別状はないものの、何が起こるかわからない。
 それでもこれからのことを考えると、ティルサにはルトヘルの魔力に慣れてもらう必要があったのだ。
「そうか……。あまり、彼女に迷惑をかけないように」
「父さん。その言葉はオレにではなく、母さんに言ってください」
 オスクはまた、黙って首を横に振った。
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