執着魔法使いの美味しい求愛
 素直に「好き」と言えないところが、まだティルサの自信のなさの表れだった。
 ティルサの返事を聞いた彼は、愉悦に満ちた笑みを浮かべてから、首元に唇を寄せた。唇以外にも口づけを落とされるのは、これで三度目。一度目は首元。二度目は鎖骨。今日は、それよりも際どい部分を攻めている。
 肩が開いているドレスは、ルトヘルの手によってするすると下げられていく。外気に触れる肌。そして、女性の象徴が露わになる。
 ルトヘルは、そこへ口づけを落とす。彼の唇が触れただけなのに、ティルサの身体はしっとりと汗ばみ、それすら舐め上げられる。
 最後には「もう、やめて……」とティルサが口にしないと終わらないほどだ。
 時間にしてはほんの少しなのかもしれない。だけど、ティルサにとってはとても長い時間に感じられたのは、悦楽に満ち足りた時間だったからだろう。
 息はあがり、肌はほんのりと赤く色づく。
 そんな彼女を見下ろしたルトヘルも満足そうに笑みを浮かべると、身体を拭くための大きな手巾を準備する。
 自分でやるから、と言うティルサの言葉を聞かず、ルトヘルがティルサの肌を優しく拭き上げるのだ。
「ティルサのドレスが乱れてしまったね。直してあげる」
「誰のせいだと思っているのよ」
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