執着魔法使いの美味しい求愛
 頬を膨らませて答えてみるが、ティルサだって本気で怒っているわけではない。少しだけ、こういった駆け引きを彼と楽しみたいだけ。
「誰のせい? それは間違いなくティルサのせいだよね。君が可愛すぎるのが悪い」
 ルトヘルはドレスのリボンを結び直す。
「やっぱり。ティルサ、少し痩せてきたようだね。いつもとリボンの結ぶ位置が違う」
「そうなの。ルトヘルも気づいてくれた?」
 ティルサは嬉しくて一際大きな声をあげた。
「やはり、効果は出ているようだね」
 上唇をぺろりと湿らせた彼の姿に、色気を感じてしまった。ティルサはそれを勘付かれないようにと、下を向く。
「ルトヘル、そろそろ時間だから帰るね」
「そうだね。送っていくよ」
 そしてシラーニ家の馬車でフレーテン家の屋敷まで送ってもらうのが、ここのところの一連の流れであった。
「ティルサさん」
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