執着魔法使いの美味しい求愛
 ルトヘルの手は太腿に伸びていて、内側をさわさわと撫で上げる。ちょうど足の付け根に彼の手が触れた時、ティルサは身体を震わせてからルトヘルの肩を掴んで、引き離した。
「ルトヘル……」
 彼の唾液によってまみれた唇でその名を呟くと、彼は苦しそうにティルサを見下ろしていた。
「ティルサは、オレを拒むの?」
「拒むわけじゃないけど。だけど、こういうのはイヤ」
「こういうのって、どういうの?」
 さわりと彼が太腿を撫で上げる。
「そういうのっ。どうしてルトヘルは話を聞いてくれないの? 話をしてくれないの?」
「話……? 話すことなんてある?」
「あるわよ」
 ティルサはルトヘルを突き放した。彼の身体が離れた隙に、彼の下から逃げる。
「私、ルトヘルのことをもっと知りたい。ルトヘルの家族とも仲良くなりたい。私、ルトヘルのこと、知らなすぎる……。それが、悔しい……」
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