執着魔法使いの美味しい求愛
「好きの種類……。好きには、いろんな種類があるのか?」
「た、多分……?」
 そうやって聞かれてしまうと、ティルサもうまく答えることはできない。だが、彼の両親や父親に対する「好き」と、ルトヘルに対する「好き」が違うということだけはわかる。
「だって、こういうことをするのは、ルトヘルだけだし。ルトヘル以外の人とはしたいとは思わないし……」
「こういうことって、こういうこと?」
 ルトヘルは再びティルサの唇を塞ぐ。だが、それは深い口づけではなく、ただ唇を貪る程度の柔らかな口づけ。
 ちゅっと音を立てると、名残惜しそうに唇を離した。
 あまりにも嬉しそうにルトヘルが微笑んでいるので、なぜかティルサは恥ずかしくなってしまった。
「もう、揶揄わないで」
 強がりを見せるだけでせいいっぱいだった。
 ルトヘルは嬉しそうにティルサをぎゅうぎゅうと抱きしめてくるし、ティルサは少しだけ本心を曝け出したことが、顔から火が出る思いがしていた。
 だが、扉を叩かれて二人は、はっと二人はそちらに顔を向けた。
「そろそろ食事の時間よ。食事の時くらいは、顔を見せなさい」
 ノーラの凛とした声が聞こえた。

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