執着魔法使いの美味しい求愛
　間違いなく目の前の両親は気づいている。だけど、それを咎めようとはしない。
　これからティルサがルトヘルと暮らしていくのであれば、彼女はルトヘルの魔力に慣れる必要があるからだ。
　過剰に魔力を摂取させないように、それだけ気をつければいい。
「ところで、ティルサ。君の部屋はどこになったの？」
　ルトヘルが不在のうちにこの屋敷にやってきた彼女の部屋を用意したのは、ノーラだ。
「二階の東側の日当たりの良い部屋よ」
　ティルサは嬉しいのか、にっこりと微笑んでいる。
「お部屋も、とても可愛らしくて。お姫様になったような気分だわ」
「二階の東側？　オレの部屋から、ずいぶん離れているようだけど」
　ルトヘルは目の前のノーラを睨みつけた。ルトヘルの部屋からティルサの部屋にいくまでには、目の前の両親の部屋の前を通る必要がある。
「当たり前でしょう？　あなたたちはまだ婚約の身なのだから」
　すまし顔で、ノーラが答えた。
< 89 / 147 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop