執着魔法使いの美味しい求愛
 突然、ノーラがナイフとフォークを置いて席を立つ。
 その顔は険しく、瞳には侮蔑の光を灯している。そして視線の先にいるのはオスクだった。
「ごちそうさま」
 そう言って食堂を出ようとするノーラの後ろを、慌ててオスクが追いかける。
「お義母様たち、喧嘩でもなさったのかしら?」
 不思議そうにティルサが首を傾げる姿も、ルトヘルにとっては愛らしい姿である。
「気にする必要はないよ。どうせ、父さんが余計な一言を口にしただけだ。あの二人はいつもそう。だけど、明日には仲直りしているから。それよりも、口を開けて」
「これ以上食べたら、また太ってしまうわ」
 ティルサはお腹をさすりながら、ルトヘルに訴えてくる。だけど、彼はそれすら笑顔で交わす。
「心配しないで。これもティルサには必要なエネルギーなんだから。それに、ティルサが美味しそうに食べる姿を見るのが好きなんだ」
「もう」
 少しだけ頬を膨らませてから、ティルサは口を開ける。
 そんな彼女の姿を見たルトヘルは、幸せをかみしめていた。
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