執着魔法使いの美味しい求愛
 ミクリナ公爵夫人。魔法貴族の一人であるミクリナ公爵は、ルトヘルと同じ王宮魔法使いである。年は四十歳を過ぎており、年頃の娘が一人と息子が二人いる。その年頃の娘の名がバーバラなのだ。
 これも全てティルサが魔法貴族名鑑で覚えた内容である。
「エリンも参加するし。私もいるから。ね?」
 ノーラは、ティルサが魔法貴族の世界に早く馴染めるようにと、あの手この手を尽くしてくれる。
 今までの生活でお茶会とは縁のなかったティルサであるが、これからルトヘルと共になるのであれば、避けては通れない道だろう。
「わかりました。お願いします」
 ティルサのその返事を聞くや否や、ノーラはうきうきと顔を輝かせ始めた。なぜ彼女が楽しそうにしているのか、すぐさま理由がわかった。
「新しいドレスを準備しましょうね」
 まだティルサには慣れない。何か催しものがあるたびにあつらえられる新しいドレス。
 だがノーラが言うには「お金があるとことがお金を使わないと、経済は回らないし、仕立て屋だって仕事にならない」とのこと。
「それにティルサも体型が変わってきたみたいだし。今までのドレスは寄付をしましょう」
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