ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「泣かないでください、舞さん。私と彼が別れたのは私たちの問題で、舞さんにはなんの責任もありません」

 彼女の言葉がなかったとしても、三年前の弱い自分では結果は同じだったと思う。

「それに、彼とは再会したんです」
「えっ?」

 驚く舞に、琴音は自分の話を語って聞かせた。黎治との間の子をひとりで育てていたこと、彼と再会しもう一度関係を築いていること。

「……そうなの? ふたりはちゃんと幸せになったの?」

 ここで「はい!」と答えたら、彼女の心を軽くできる。それはわかっていたけれど嘘はつけなくて、琴音は正直に打ち明ける。

「そうなれたら嬉しいんですけど、まだちょっと試練がありそうな感じで……」

 舞は涙を拭って、ふっと目を細める。

「偉そうなこと言える立場じゃないのは重々承知だけど……永瀬コーパイは琴音ちゃんにベタ惚れだと思うな」
「えぇ?」
「カフェで見かけたときも、私がふたりを強引に引き離しちゃったときも……彼が琴音ちゃんを見つめる瞳には愛があふれていたもの」

 舞は自嘲するように薄く笑む。

「あの人が、私を見る目とは全然違った。男の人って、本当に大切な女性にはこういう顔を見せるんだって……ある意味、思い知らされた感じだった」
「舞さん」
「今度は、心からふたりの幸せを願ってる。だから自信を持って、彼と幸せになってね!」
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