ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 あの頃、琴音が憧れていたキリっとかっこいい笑顔で舞は琴音の手を握ってくれた。

「はい。黎治さんとちゃんと話してみます」

(そうだよね。三年前と同じ過ちは繰り返さない。今度はちゃんと、自分の気持ちを正直にぶつけてみよう)

 どんな困難があっても、黎治と蓮と凜と……四人で歩んでいきたい。絶対に、手を放したくないのだと。

 舞と別れたあとは、乙葉と合流して一緒にランチをした。

 乙葉にも相談してみる。

「絶対に、その嫌~な女がなにか仕掛けてきたのよ! 彼の荷物にGPSを仕込んで、偶然を装って現れた……とかさ」
「さすがの沙里ちゃんでも、そんな犯罪じみた行為はしていないと思うけど」
「え~、わかんないわよ?」

 荒唐無稽な乙葉の推理を聞いていたら、なんだか前向きになってきた。

(GPSはないにしても、意外となんでもない理由なのかもしれない)

「今夜、会える予定になっているからちゃんと聞いてみるよ」
「うん。報連相、夫婦の間でも基本だからね!」

 夕方四時には自宅に戻って、蓮と凜と一緒に夕食のお好み焼きの準備を始める。ちょうどそのタイミングで、黎治からもうすぐ到着するというメッセージも届いた。

「まぜまぜ~」
「おいしくなぁれ」
「そうそう、ふたりとも上手!」

 慣れないながらも、ふたりは一生懸命にお好み焼きのタネを混ぜてくれる。

「パパ、お好み焼き好きかなぁ? 喜んでくれるといいね」
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