ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 自信たっぷりに宣言した黎治に副操縦士は苦笑を返す。

「今日、PFが永瀬機長でよかったです」

 黎治は風を読み、その力を味方につけて機体を安定させる。それからゆっくりと降下に入った。

 離着陸時の揺れは乗客を不安にさせる。揺れの少ないソフトランディングは、優秀なパイロットの証でもある。

 黎治の操縦する機体は、なめらかに滑走路におり立った。

「さすが永瀬機長!」

 四日ぶりの日本。首都空港に到着したのは、予定時刻より少し早い夜九時だった。

(明日は、琴音と蓮と凜に会える)

 向こうで三人に土産を買った。どんな反応をしてくれるか、楽しみで仕方ない。

 デブリーフィングと呼ばれる、フライト後の反省会を終えたところで黎治のスマホが鳴った。

 相手はBBL航空の社長、桜の父親だ。

 黎治と彼は、社長といちパイロットというだけの関係ではない。黎治は小学校から高校まで一貫教育の私立校の出身で、社長はそこの先輩に当たる。

 OB・OGの繋がりが深い学校なので、BBL航空に入社する前から顔見知りだった。社長自身も元パイロットという経歴を持っているので、今もなにかと目をかけてもらっている。

 とはいえ、こんなふうに急に連絡があることは珍しい。

「はい、永瀬です」

 どんな用だろうか?と不思議に思いながら応答する。

「え、明日ですか?」
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