ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 一日の仕事を終えた、夕方六時。

 琴音はすっかり油にまみれてしまった制服を脱ぎ、オフホワイトのニットと細身のパンツという私服に着替える。子どもが生まれてからというもの、すっかりパンツ派になってしまい、スカートはクローゼットの奥に眠ったままだ。

 髪も地味なヘアゴムでクルッとお団子にまとめる。慌ただしくロッカールームを出て、保育園へと足を速めた。

(……それにしても、油断してたぁ。不意打ちすぎるよ)

 仕事中はどうにか思考から追い出していた、黎治の姿が脳裏にポンと浮かぶ

(あいかわらず、いや、ますます……素敵になってたなぁ)

 誰をも惹きつける圧倒的なオーラは健在、三年前より色気と渋さがパワーアップして……かっこよすぎる、それが現在の彼に対する琴音の素直な感想だった。

(私のこと、覚えててくれたんだ)

 抑えようとしても、胸にじわりと温かなものが広がる。

 でも、喜んでいる場合ではない。万が一、双子のことが彼にバレたら――。

(ふさわしい女性と幸せな結婚をしたはずの彼に迷惑がかかる。それに私だって、今の職場にいられなくなる可能性が……)

「やっぱり、もっと早くにBBLグループを離れるべきだった」

 自分の甘さを、今さらながら後悔する。
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