ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 約束したとおり、彼は夕方には来てくれてきちんと話ができた。

 琴音と沙里の過去の因縁、そして黎治を気に入った彼女から〝身を引け〟といったような話をされたこと。

 黎治はすべてを笑い飛ばし、『俺が今さら、大事な琴音と蓮と凜を手放すはずないだろう?』と抱き締めてくれた。

 そのうえで、彼はなぜ銀座で沙里と一緒にいるはめになったのかを説明した。

 沙里はすぐに露見するような、浅はかな嘘をついただけだった。

 彼女は小学生時代から、なにも変わっていない。ちっとも大人になっていないのだ。そう思ったら、彼女を恐れていた気持ちがすぅと消えていった。

『でも、黎治さんが沙里ちゃんをお断りしたら、BBLとメインバンクの関係が悪化したりしませんか? 私のせいでBBLが困るような事態になるのも……』 

 その点だけは気がかりだったが、黎治がククッと笑って打ち明けてくれた。

『これはまだ内密にしておいてほしいんだが、実は社長は取引銀行の見直しを検討しているところらしくて……だから、俺と彼女がうまくいかないのは、かえってよかったと言われたよ』

 そのうえで、彼はこう話を締めた。

『櫻木さんには俺からガツンと言っておく。琴音はなにも心配しなくていい』

(黎治さんがガツンと言った……ということなのかな?)

 今日、和志たちだけでなく沙里も呼んだという話は聞いていた。
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