ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
『琴音たちは少し遅れて来てもらえるとちょうどいいな』

 黎治にそう言われて、琴音はここに来たのだ。
 解錠されたオートロックドアを抜けて、黎治の部屋へと向かう。

「待ってたよ」

 甘くとろけるような笑みの黎治が出迎えてくれる。

「パパ!」

 双子の嬉しそうな声が重なった。

「あの、今……下で沙里ちゃんとすれ違ったのですが」

 彼は蓮と凜が靴を脱ぐのを手伝いながら、さらりと答える。

「あぁ、きっぱり断った。多分、もう二度と俺たちには近づいてこないと思うから安心して」

 黎治が彼女になにを言ったのかは不明だが、解決したようだ。

「彼女の話なんかより、大事な用件があるんだ」
「大事な用件?」

 リビングに続く廊下を歩きながら、琴音は聞き返す。

「あぁ。この前、琴音の家に行ったときに渡すつもりだったのに、すっかり忘れてたよ。先日のパリへのフライトで、三人に土産を買ったんだ」
「え、そうだったんですか? よかったね、蓮、凛!」

 ふたりに顔を向け、琴音はほほ笑む。

 リビングに入ると和志と桜がいて、琴音はぺこりと頭をさげる。

「こんにちは。和志さん、桜さん」
「こんにちは~、琴音さん」

 桜がそう答えてくれたが、ふたりは立ちあがり帰り支度をしているような雰囲気だ。

「あら、もう帰っちゃうんですか?」

 残念に思って琴音が聞くと、和志がクスリと笑う。
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