ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 黎治からのプレゼントは、かなり大きなサイズの絵本だった。

 フランスらしい華やかで洗練された装丁に、蓮も凜もパッと瞳を輝かせる。

「わぁ!」
「しゅごい、しゅごい」

 いわゆる仕掛け絵本というやつで、ページをめくるたびに立体的な絵が浮かびあがる。

「素敵ですね。ふたりとも、パパにお礼を言ってね」

 声を揃えて「ありがと~」を言われた黎治は、満足そうに頬を緩めた。

 それから、彼は琴音の横に腰をおろす。

「ふたりが喜んでくれてよかった。――琴音にも喜んでもらえるといいんだが」

 彼にしては珍しく、少し緊張したような声で言って……胸ポケットから紺色の小箱を出す。

「え?」

 彼は琴音の目の前で、その箱を開けてみせる。

「こっちは琴音に」

 見たことないほど大きな、美しいダイヤモンドの輝く指輪だった。

「これって……」
「パリには、グランサンクをはじめとした名立たる宝飾店が揃っているからな」

 グランサンクとはパリの五大宝飾店とも呼ばれる、高級ジュエラーのことらしい。黎治が五つのブランドを教えてくれたが、ファッションに疎い琴音でもいくつかの名前は聞いたことがあった。

(……そんな高級店とは一生、縁がないと思ってたけど)

「琴音に一番似合うものを探してきた」

 そう言って、彼は琴音の左手を取る。薬指にそっと指輪をはめ、それからゆっくりとこちらに顔を向けた。

 熱っぽい眼差しが琴音を射貫く。
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