高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 ふたりを産んだときに誓ったのだ。

 蓮と凜と自分、絶対に家族三人で幸せになると。今さら、黎治に再会したくらいで揺らいでいる場合ではない。

「よし!」

 強い母の顔を取り戻し、琴音はふたりを迎えに行く。

「ママだ~」
「おかえりしゃい」

 保育室をのぞくと、ふたりはすぐに琴音に気がついて駆け寄ってくる。

「ただいま!」

 デレデレに頬が緩む。一日のうちでもっとも幸福を感じる瞬間だ。

(そうだよね。ふたりさえいてくれれば……ほかにはなにも望まない)

 その必要があるなら、転職だってなんだってやり遂げればいい。

(帰ってから、もう一度よく考えてみよう)

「ママ、さっきねぇ」
「おやつ、モチモチのやつだったの!」
「うんうん。今日も楽しかったのね」

 ふたりの話に耳を傾けながら、荷物を取って帰宅の準備をする。

「先生、今日もお世話になりました」
「いえいえ。お母さんも、お仕事おつかれさまでした!」

 先生や友達にさようならを告げて、園を出る。

「ふたりとも歩く? ベビーカーに乗る?」

 機嫌のいいときは長い時間歩いてくれるようになったけれど、まだまだベビーカーは心強い味方だ。あまり見かけない、双子用の大きなベビーカーは子ども心をくすぐるようで、ふたりはこれに乗るのが結構好きなのだ。

「のりゅ~」
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