ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
二 茜色に染まる別れ

 二 茜色に染まる別れ
 
 
 女の子は難しい。ピカピカのランドセルを背負っていた頃はみんな仲良しだったはずなのに……いつの間にか趣味が合う同士のグループができあがり、あぶれる子が出てきてしまう。子どもの頃の琴音が、まさにそれだった。

『飛行機のプラモデル~? 琴音ちゃん、女の子なのに……絶対変だよ! ね、みんなもそう思うでしょう?』

 小学校三年生の春、琴音にそんな言葉を投げつけてきたあの子は『沙里(さり)ちゃん』という名前だった。サラサラのロングヘアにキラキラのカチューシャをつけた、お人形みたいにかわいい女の子。

 琴音の実家は自動車の整備工場を経営していた。作業着姿で車をいじる父をいつも近くで見ていたので、自然と乗りものや機械に興味を持った。車も電車も好きだったけれど、なかでも一番のお気に入りは飛行機だった。

(車よりずっとずっと大きくて重いのに、なんで空を飛べるんだろう?)

 飛行機は幼い琴音の目には〝魔法の乗りもの〟に見えたのだ。以来、飛行機の図鑑を眺めたり、プラモデルを組み立てたりするのが一番の趣味になった。着せ替え人形や魔法少女のアニメはあまり好きではなかったけれど、友達と外で遊ぶのは大好き。

 自分はただ飛行機が好きなだけの、普通の女の子だと思っていた。だけど、クラスの人気者だった沙里に『変!』と言われて以来、仲良しだった友達も離れていった。

(どうして? 飛行機が好きだと、友達ではいられないの?)
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