ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 最初はすごくショックを受けて、飛行機を嫌いになろうとした。沙里に好かれる〝女の子らしい女の子〟になろうとも思った。だけど、どうしてもできなくて……。

 沙里と同じクラスだった二年間は、苦しくて悲しい記憶ばかりだ。自分の本心を隠して、ヘラヘラと偽物の笑顔を浮かべて過ごしていた。

 小学校五年生になったとき、沙里は東京に転校していった。彼女が去っても、琴音に貼られた変わり者のレッテルがはがれることはなかったけれど……。

(うん、変でもいいや。私は『変な女の子』として生きていこう)

 そう決めたら、すっかり心が軽くなった。中学にあがる頃には変わり者のポジションにもすっかりなじみ、似たように我が道を行くタイプの友達もできた。

 飛行機への情熱はまったく冷めず、高校卒業後は航空整備士の資格が取れる専門学校に進み、念願だったBBL航空系列の整備会社に就職。

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