高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 現在の琴音は二十六歳、整備士になって五年。

 好きなものに囲まれて働く日々は最高に楽しくて、充実している。

(あのとき、無理して飛行機を嫌いになったりしなくて本当によかった!)

 あいかわらず女性らしいものは少し苦手で、年頃になっても恋人どころか好きな人すらいないのが少しコンプレックスではあるけれど……。

「わぁ、やっぱり『トリプルセブン』はかっこいいな~」

 整備作業の合間。ふと空を見あげると、大型の飛行機がここ、首都国際空港に到着するところだった。ボーイング777、通称トリプルセブンはアメリカのボーイング社が製造しているジェット機で、BBL航空でも主力となっている機体だ。

「そうね、フォルムが美しいわよね」

 琴音のひとり言に同意してくれたのは、数少ない女性整備士仲間である江藤舞(えとうまい)。年は琴音より三つ上、キリッとかっこいい顔立ちで仕事もできる憧れの先輩だ。

「いやいや、トリプルセブンの最大の魅力はエンジンでしょう!」

 横からそう口を挟んだのは、飛行機オタクの新人くん。この職場では〝飛行機が好き〟は当たり前で、特別でも、変わった趣味でもない。、琴音にとっては、最高の環境だ。

「今日は風が強いから、ランディングが大変そうね」
「あぁ、たしかに」
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