ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 舞の言葉を聞き、琴音もトリプルセブンを見あげる。大きな機体は高度をさげ、着陸の準備に入っている。だが、それを邪魔するかのような強風が吹きつけていた。

 最近の飛行機の操縦室はかなり自動化が進んでいるが、それでもパイロットの技量が試される場面はまだまだ多い。発着陸の瞬間もそのひとつだ。

 今日のように荒れ気味の天候だと、熟練のパイロットでも着陸に時間がかかると聞く。

「さて、うまくいくかな?」

 お手並み拝見とばかりに舞が言い、三人はトリプルセブンのランディングを見守った。

(――なんて綺麗なんだろう)

 琴音は思わずハッと息をのむ。大きな機体は風を味方につけて、美しく、雄大に、大地におりたった。

「お見事!」

 パチパチと舞が拍手を送る。

「うまいですね~。ベテランの機長でしょうか?」

(本当……誰の操縦だろう?)

 飛行機は好きでも、操縦するパイロットにはこれまで興味なんてなかったのに……。これほどまでに飛行機を輝かせることができるパイロットは誰なのか、知りたいと思った。

 ほどなくして、機体からパイロットがおりてくる。彼はゆっくりと琴音たちのいるほうに近づいてきた。

(……すごい。トリプルセブンに負けないくらいに綺麗な人)

 滑走路を背景に歩く彼の姿は、そのまま映画のポスターにできそうなくらい絵になっている。浮世離れした美貌と圧倒的なオーラに目を奪われた。
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