ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「あぁ、なるほど。永瀬コーパイの操縦だったのね」

 隣で舞が納得したようにうなずいている。

「永瀬コーパイ? 副操縦士さんなんですか?」

 コーパイとは副操縦士を指す業界用語みたいなもの。副操縦士は英語でコー・パイロットなのでそれを省略したのだろう。

(ベテラン機長じゃなかったんだ……)

 その事実に琴音は少なからず驚いた。センスや才能ももちろんあるだろうけれど、技術職は経験がものをいうことが多い。あれだけの操縦技術を持つのは、年数を重ねたベテランパイロットだと思っていたのだ。

「彼、BBL航空の長い歴史のなかでも一、二を争う腕のよさだって評判なのよ」
「へぇ、そうなんですね」

 琴音と違って、舞は明るく社交的。他社の整備士、CA、グランドスタッフと幅広い人脈を築いており、やたらと情報通なのだ。

 彼の名前は永瀬黎治。三十一歳の副操縦士で、このままいけば歴代最年少で機長に昇格するだろうと評されている逸材とのこと。おまけにルックスもいいので、CAやグランドスタッフからアイドル的な人気を誇っているそうだ。だが、いい評判ばかりではないようで……。

「まぁ、いわゆるプレイボーイってやつみたい。琴音ちゃんも遊ばれないように気をつけてね」

 どういう意味かわからなくて、琴音はキョトンとしてしまう。一拍置いて、ようやく舞の言いたいことを理解し、クスリとする。
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