ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
(あ、謝らないと。おかしな話をしてごめんなさいって)

 そう思うのに、彼の瞳のなかに囚われてしまったようで、琴音は言葉を発することができずにいた。

「それとも、俺に奪ってほしくて言ってる?」

 柔らかで色っぽく、甘い毒を含んだような笑顔。琴音の背中がぞくりと震える。

「えぇ? いや、そんな……ことは……」

 黎治の肘が琴音の顔の横に置かれる。膝が、琴音の太ももを押す。身体の大きな彼が覆いかぶさってくると、琴音の視界は黎治だけでいっぱいになってしまう。

「あ、その……」
「NOなら、ちゃんとストップしてやる。けど、沈黙はYESとみなすから」

 彼はきっと経験豊富な悪い男。

「冒険してみたいなら、俺以上の適任者はいないと思うけど?」

(永瀬コーパイは、甘くて、ズルくて……とびきり優しい)

 琴音が心の奥底でなにを望んでいるのか、見抜いたのだろう。

 いつまでもNOと言えない琴音の唇を、彼はクスリと笑って……奪ってしまう。

(これが、キス?)

 ふにっと柔らかなものが触れた瞬間、琴音の脳に痺れるような刺激が走った。角度を変えながら、ついばむような優しいキスが繰り返される。

(なんだろう、頭がふわふわして……心地いい)

「ふっ、んん」

 自分の声とは思えない、甘ったるい声がこぼれる。黎治はそっと唇を離すと、今度はコツンと額をくっつけた。

「初めてにしては優秀だな。いい反応だ」

 黎治の美しい瞳が優しく細められる。

「――あっ」

 もう一度、彼に食べられた。今度はさっきよりずっと大人なキス。わずかに開いた隙間から熱い舌が侵入してきて、口内を蹂躙していく。

 息もできない激しい口づけに酔わされ、琴音は浅く息を吐いた。

「覚悟しとけよ。もっと、ドロドロになるまで溶かしてやるから」
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