ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「俺は飛行機も車も、愛しい恋人だと思って接するようにしている。かすり傷ひとつ負わせないよう、丁重に触れるんだ。そうすると、こっちの気持ちを受け取って最高のパフォーマンスを発揮してくれる」

「へぇ……永瀬コーパイに愛される飛行機は幸せ者ですね!」

 素直な感想を言葉にして、琴音は頬を緩めた。それから、気になっていたことを聞いてみる。

「あの、私がBBLの整備士だってどうしてわかったんですか?」

 制服ならともかく、もう私服に着替えているし整備士だと特定できるような要素はなかったはず……。

(もしかして、顔に油汚れが残ってるとか?)

 琴音はとっさに両手で顔を隠す。

「わかったというより、知ってた」
「え?」

 いたずらっぽく目を細めて、彼が言う。

「君と俺、よく似てるから」
「に、似てる?」

 パーフェクトな彼と地味な自分。似ているどころか、真逆の存在に思えるが……どういう意味なのだろう。琴音が首をひねると、黎治はふっと頬を緩めた。

「いつも、送り出す機体を愛おしげに撫でてるだろう? おもしろい子がいるなと思ってたんだ」

(嘘……永瀬コーパイに存在を認識されていたなんて……)

「君も俺と同じ。まるで、恋するみたいな瞳で飛行機を見てた。な、似てるだろ?」

 少年のような、無邪気な笑顔に琴音の胸はドクンと鳴った。男性にドキドキする、琴音にとって初めての経験だった。
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