高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
一 青空のもとの再会
一 青空のもとの再会

 すっかり秋も深まった十一月初旬。
 ここは東京都大田区にある『首都国際空港』、日本の空の玄関だ。

 時刻は朝の七時半。琴音が足早に向かう先は、この空港内に入っている『大空保育園』だ。今日はいつもより少し家を出るのが遅くなってしまい慌てているところなのだが……。

「ふえ、ふえっ。リンちゃ、や~」
「だって、レンがぁー!」

 最愛の子どもたち、双子の兄妹である(れん)(りん)が今日も仲良く喧嘩を始める。二歳になったばかりなのだが、感心するほどにお喋りが達者だ。

「ふたりとも、朝から喧嘩しないの!」

 琴音はぴたりと足を止め、自身の右側にいる蓮と左にいる凜の顔を順に見る。優しくて泣き虫な兄と、元気いっぱいで少しヤンチャな妹。性格は正反対だけれど、ふたりの顔はそっくりだ。二卵性双子で、ここまで似ているのは珍しいとよく驚かれる。
 ツヤツヤでまっすぐな黒髪、綺麗な卵型の輪郭、クリッと大きな目に、ふっくらしたかわいらしい唇。親の贔屓目を抜きにしても、ものすごく美形だと思う。

(私の要素は……うん、ほとんどないな)

 キラキラのアイドルフェイスな双子とは大違いで、母である琴音はとても地味だ。身長は日本人女性の平均とぴったり一緒、スタイルもごくごく平凡。鎖骨に届く長さの髪は少し癖があってふわふわしているけれど……飛行機の整備士という職業柄、いつもまとめてしまうのであまり知る人はいない。

 どちらかといえば面長で、つぶらな瞳と小さく丸い唇。『物静か』『優しそう』、そんなふうに言われることはあっても『美人』と言われた記憶はほぼない。

(あぁ、でも彼だけは……『かわいい』と何度も言ってくれたな)
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