ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 後輩の問いかけに、先輩CAは力いっぱいうなずく。

「うん! 旧華族のお嬢さまは伊達じゃないわ。気品がすごくてね~、永瀬コーパイの隣で見劣りしないのは彼女くらいかもね。しかも桜さん、性格もいいらしいから」
「え~。そこは、嫌な女であってほしかったですぅ」

 彼女たちはショックと言いつつも、最後は明るく笑いながらトイレを出ていった。

 琴音は……突然に突きつけられた事態をうまく消化できずに、その場に立ち尽くす。

(イギリス……結婚……なにも聞いていないけど)

 そこでふと、黎治が『大事な話がある』と言っていたことを思い出す。

(もしかして、これが大事な話? だとしたら……)

 自分が愛の告白をされるかもと思っていたなんて、大恥もいいところだ。むしろ真逆、彼は琴音に別れを告げるつもりだったのかもしれない。

 従業員食堂に入り、舞を捜す。彼女のほうが先に気がついて、「琴音ちゃん!」と手をあげてくれた。

 琴音が向かいの席につくなり、舞が顔をのぞき込んでくる。

「どうしたの、具合でも悪くなった?」
「いえ、なんでも……」
「なんでもないって顔じゃないわ。真っ青よ」

 信頼できる相談相手は彼女しかいない。琴音は深呼吸をひとつして、口を開く。

「あの、舞さんは知っていますか? イギリスのLTK航空とBBLの提携の話……」

 彼女は何度か目を瞬き、それから小さくため息を落とした。
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