高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
「ふたりとも、よかったな! サラダとハンバーグも頼もうか。野菜とお肉もしっかり食べるんだぞ」

 お茶だけで済ませるつもりだったのに、彼の自然な誘導により琴音もチキンステーキセットを頼むことになってしまった。

「わ、おいしい」

 ひと口食べて、すぐにそんな感想がこぼれた。

 熱々の鉄板で運ばれてきたチキン。パリッとした皮目とバター醤油ソースの相性が抜群で、期待を上回る味だったからだ。

「ここ、ファミレス風だけど味は本格的なんだよな」

 パイロットの間でも人気があるそうだ。

「へぇ、そうなんですね。昼時はいつも混雑しているから、入ったことありませんでした」

(って、そうじゃなくて!)

 落ち着き払っている彼のペースにのせられて、なんだか普通に食事を始めてしまったけれど……気になることは山ほどあるのだ。

「あの、黎治さんはどうして大空保育園に?」

 国内線に乗務する場合、パイロットやCAは往復して最初の空港に戻ってくるのはよくあることだ。午前に札幌に飛んだ彼は、短い休憩を挟んで東京へと帰ってきたのだろう。それは納得できるのだが、保育園にいたのは偶然なんだろうか?

「もちろん君を待ち伏せするためだ。整備士に君のことを聞いたら、教えてくれたよ。女性整備士はまだ珍しいし、双子を育てるシングルマザーということもあって有名人らしいな」
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