高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 彼の言うとおり、子持ちの女性整備士はそう多くないので整備士仲間の間では琴音の話はよく知られている。

黎治と話した整備士も、ちょっとした雑談のつもりだったのだろう。

「話がしたくて、君を捜していた」

(私に会うため? 黎治さんの話って……)

 ドク、ドクと動悸が激しくなっていく。彼は琴音を一瞥し、ゆっくりと口を開く。

「まず、君の誤解を訂正したい」
「誤解?」

 なんの件だろう、琴音は首をかしげた。

「昼間、妙なことを言っていただろう? 俺は独身なのに」
「――え? 離婚してしまったんですか?」

 琴音の言葉を彼は即座に否定する。

「そうじゃない。俺は一度も、結婚していない」
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 琴音に言い聞かせるように、彼ははっきりとそう言った。
 思ってもみなかった告白に、琴音の目が点になる。

(どういうこと? 黎治さんはBBLの社長令嬢と結婚したはずでは?)

 最後に会った喫茶店で、彼自身が『桜さん』との結婚を話題にしていた。その電話を、琴音はたしかに聞いたのに……。

「まさか君も、俺が桜さんと結婚したと思っていたのか?」

 黎治は目を見開き、そんな言葉を口にする。

「え、だって――」

 琴音は三年前、当時のことを彼に話す。整備士の先輩である舞も、BBLのCAも、みんな黎治と桜の縁談を噂していたのだ

「それに黎治さんも、あの日、電話で……」
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